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  • 発酵とは
発酵とは

・ 狭義には、酵母などの微生物が嫌気条件下でエネルギーを得るために有機化合物を酸化して、アルコール、有機酸、二酸化炭素などを生成する過程です。 広義には、微生物を利用して、食品を製造すること、有機化合物を工業的に製造することをいいます。

生物がエネルギーを得るための代謝は、大別して発酵、呼吸、光合成の三種があります。 発酵と呼吸(好気呼吸、嫌気呼吸)は、有機物(例外的に硝酸塩や硫酸塩などの無機物)を酸化させ、その時遊離されるエネルギーでATPを合成する過程です。 この酸化反応の副産物の水素(もしくは電子)の排出形態によって3つの代謝に分けられます。すなわち、水素(もしくは電子)を有機物に渡せば発酵、酸素に渡せば好気呼吸、無機物に渡せば嫌気呼吸になります。

発酵の大きな役割は二つあります。一つは上述のように、有機物を酸化分解しATPを得ること。もう一つは、還元型NADを酸化型NADへ戻す役割になります。詳しくは発酵の型で後述します。


  • 学問としての発酵学の興り
17世紀末のオランダでアントニ・ファン・レーウェンフックが手製の顕微鏡を用いて、微生物を発見しました。 彼はビールの中に顆粒を発見したと記録しています。おそらくこれが酵母の発見だと思われますが、この時点ではそれと発酵の関連は考慮されていません。

発酵と微生物の関連については、古くは1818年に、Erxlebenがパンの発酵が微生物によるとの説を唱えましたが、ほとんど取り上げられませんでした。 1830年代には、数人の学者が「酵素の生命力説」を主張し、酵母の活動によって、糖分がアルコールと二酸化炭素になると主張しました。 これは当時の化学界を大いに刺激し、リービッヒらはこれを否定し、化学物質の変化は単純な化学反応であって、そこに生物の関わる余地はないと主張しました。 彼らによると、酵母はそのような化学変化の結果として生じるものにすぎないといいます。

これらの論争に決着をつけたのがパスツール。彼は酵母を様々な条件で培養し、酵母の発育の結果としてアルコールを生じること、ただし酸素が利用できる条件ではアルコールは発生せず、 酵母の成長はその方がよいことなどを発見し、アルコール発酵は酸素呼吸の代用として酵母が行うものであること、それらが酵母が生活のためのエネルギーを得るために行う反応であると述べたそうです(1876)。

これで一旦は論争が収まったかに見えましたが、1897年にブフナー兄弟は酵母を破砕した物質が、発酵を進める能力があることに気がつきました。 そこから、酵母の内部にアルコール発酵を進める物質が存在すると考え、この物質にチマーゼの名を与えました。 そして、チマーゼこそが発酵の原因であり、酵母はそれを作るものではあるが、その過程そのものに生物は関与しない、との説を立てました。 しかし、その後にこのチマーゼによる発酵が通常のアルコール発酵のようにうまく進まないことが判明し、やはり酵母が発酵を行うのだとの説に落ち着きました。 現在では、チマーゼは多数の酵素の複合物質であると考えられています。


  • 日本の大学教育における発酵学
日本の大学教育では、工学部工業化学科もしくは農学部農芸化学科、もしくはそれらと類似する学科が 発酵学の教育を担っています。

かつては、山梨大学(発酵生産学科)、大阪大学(発酵工学科)、広島大学(醗酵工学科)のように単独の学科が存在した大学もありました。 最近では、発酵・微生物に特化した学科として、私立の別府大学(大分県)に発酵食品学科ができているようです。

  • 人間にとって有用な微生物の作用(広義の発酵)
発酵は食品に微生物が繁殖してその成分が変化すること。 仕組みは腐敗と同じですが、特に人間にとって有用な場合に限って「発酵」と呼びます。 その境界はかなり恣意的であり、たとえば知らない人が鮒寿司を見れば、「腐っている」といって廃棄されるのはまず間違いないし、 キビヤックに至っては、製造するイヌイット(エスキモー)以外にとってはそれが食用であるとは想像も付かないでしょう。

特殊な臭いを持つものも多いです。 くさや、鮒寿司、納豆 などはアミンや硫化物、アンモニアなどの刺激臭が強いため、これを悪臭と感じる人が多く、好き嫌いがはっきり分かれる食品です。

最も広く見られるのは、アルコール発酵を利用した酒など、いわゆるアルコール飲料の製造です。 ほぼ世界中に見られ、多様な素材を用いて様々な製造法が行われています。 アルコール発酵はパンの製造などにも使われます。 これは、いわゆる出芽酵母によっておこなわれるものです。 ちなみにアルコール飲料や液体調味料の場合は、醸造とも呼ばれます。

アルコール発酵のように、特定の少数の微生物のみでおこなわれる過程もありますが、様々な微生物が複雑に関与する例も少なくありません。 味噌や糠漬けなどはその例でしょう。その微生物の組成が異なれば、微妙に味も異なります。 かつてはそれぞれの家に古くから伝えられたものがあり、家ごとに味の違いがありました。同様な例はキムチにもあるといわれています。

発酵作用を利用した発酵食品は世界各地に見ることが出来ます。 ある種の微生物が多数を占めるため腐敗に対し耐性を示すことから、保存食として扱われる物もありますが、その鮮度が短いものも多く、 発酵食品を保存食品に分類することは誤りであるといわれています。 また中には猛毒であるフグの卵巣を、発酵作用を通して食用可能にした河豚の卵巣の糠漬けのような発酵食品もある。

なお、微生物の作用によるものではないものも発酵と呼ばれることがあります。茶の半発酵、完全発酵は、茶の葉に含まれる酵素による酸化発酵であります。